突発的に書いたお話。
前田玄以中心
良かったらどうぞ。
深夜、静まりかえる伏見城。それは、いつものことで、警護の兵しか見当たらないのが常である。
しかし、今夜は違った。いつ起こってもおかしくは無いが、絶対知られてはいけない事件が起こる。
「太閤様の脈がなくなりました」
三成はあせった。多くの大名は朝鮮に出兵している。この独裁者がこの世からいなくなったことを向こうが知ったならば、日本はどうなるのだろうか。語るまでもなく、結末は見えているのだ。ああ、なんとしてでもこの天下人を知られないようにひそかに葬らなくてはならない。
この重要な事態を知るのは五奉行と医師の玄朔と高野山の木食上人だけだ。
五奉行は各々手配をし、これがばれることがないように配慮した。
「私と玄以殿で遺体は埋葬いたします」
「うむ、では、名護屋丸口に駕籠を用意する。そこから東大門を抜け、阿弥陀が峰の墓所に迎えるように手配しよう。」
「私は東大門の警備を解くようしてきましょう」
長束はそういうと、他の手配に向かう。
「では、私は・・・」
「玄以殿は、秀吉様を運んでくだされ」
三成にそういわれた玄以は戸惑った。私に、遺体を担げというのか。そのように、最年少の奉行を見返した。
「秀吉様はそなたの背中がお気に入りだったではござらぬか。最期なのだ。そうしていただきたい。」
彼は口ではそう言えども、大名であれば、たくさんの戦をみてきたはずだ。ましては、自分は元僧侶。死体が怖いはず無かろう。そう言いたげであった。
確かに、太閤は自分の背中がお気に入りだった。病に臥してからこの広い、広い城中を移動するための足となっていたのだ。
玄以は腹を括った。この最大の事件の隠蔽を遂行するための準備が整うとともに、天下人の小さな身体を背負う。
冷たかった。背中にかけてゾクリと悪寒が走った。死に対する恐怖があった。できるならば、振るい落としてしまいたかった。
だが、玄以はそれをこらえ、長い長い廊下を渡った。彼の後には残りの奉行が続く。誰もが足音を潜め、声を堪えた。
びくとも動かぬかつての天下人に対し、彼らは何を思っているのか、玄以にはわかった。
何も思っていない。今は、この国に起こるであろう混乱を避けるための使命に必死なのだ。それは、玄以も同じだった。
名護屋丸口で駕籠に移し、長束の手配によって警護兵が消えた東大門を潜り抜けた時、玄以は、この小さな、そして誰もが畏怖したこの独裁者のことを思った。
ああ、こうもあっけないものだろうか。なんと人間は脆いのだろう。まるでこの天下人が作り上げた泡沫の国だ。
軸が折れれば、あとはもう何も残らない。
「私はもう、これ以上は望みませぬ。貴方が作り上げた天下はもうすぐ折れてしまうのでしょうからな」
悲しまれることもなく、厄介と化した口利かぬ天下人にそう一言呟き、玄以は阿弥陀が峰へと急いだ。
群雲関が原に、太閤さんが玄以の背中がお気に入りだったと書いてあったので(笑)
いちおうそれにそって書いてみた。オリジナルで補足したりね。
あと、関が原には不参加でほとんど関わらずに終わった人でもあるから、秀頼の絶対なる擁護も家康に熱心に取り入ることもしなかったのかなって。勝手に心情解釈してみました。
まあ、少なからず巻き込まれてはいるけど(笑)
- 2008/05/13(火) 17:11:41|
- 歴史創作
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